TEXTILE DIVER 布を探しに

布につながるすべての感覚をひろげて 

腰帯

西ティモールの染織品に奥行きを持たせるアイテムとして男性用の腰帯も重要です。 
これらの帯はフゥトゥと呼ばれアマヌバン、モロ地域の男たちの一枚布の腰布の装いを一層華やかにします。古い写真ではこの帯を2本3本と結んだ洒落た男たちの姿も見られますが、いまでは合成皮革のベルトにその地位は奪われています。
頭飾りのピルサルフ、檳榔袋のアルック同様、平織、綴織、緯捩、そして縫取織の技法で構成され、短冊状に織り分けた先端はしなやかに揺れ、その予想出来ない動きは着装者だけではなく観察者をも魅了します。この効果は長い長い房を持つピルサルフではもっともっと有効です。
西ティモールの乾いた言葉“UabMeto”ではピルは布、サルフは引き裂かれた、またはヒラヒラした房状を意味しますが、地域により微妙に言葉が違いそのことが混乱をまねく原因になります。いまではものが徐々に失われ、そのことを覚えている人も居なくなり、言葉も一緒に失われていきます。
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檳榔袋ALUK 〜ティモール〜

西ティモール、アトニの男性が愛用していた檳榔袋アルックと小さなバズケットはオコトゥケ。平織、緯捩、縫取織の技法によってこの小さな檳榔袋は豪華に美しく飾られています。模様、技術、サイズ構成から、腰機ではなく経糸をフレームにぴんぴんに固定して織った布を半分にして縫い合わせています。
小さなバスケット“オコトゥケ”は椰子で編んだバスケットに経糸になる糸を巻きつけた後で、針を使って緯糸紋織のような柄を出しています。
経糸を機や枠ではなく籠に筒状に張る。これも一種の輪状整経です。

檳榔袋は檳榔を持ち歩く機能としての道具だけではなく、子供から男性社会への遷移を意味するシンボルでもありました。「これで今日からはもう子供ではなのよ」。

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さて、次のステップに移行するためには、わたしは何を携帯すべきか?

ヘビの腕輪

その奇妙な形からヘビは嫌われる恐れられもしますが、同じ理由から崇め畏れられもします。人々は渦巻く姿に螺旋のエネルギーを、脱皮の様子に生まれ変わりなどさまざまな物語を見つけ信仰し身に付けてきました。これら西ティモールのヘビの腕輪“ニティサオ”は富を引きつけると信じられ、女性たちの腕にくるりと巻かれています。布を引きつけると信じて、わたしの腕にも何匹かの“ニティサオ”にしっかり巻きついてもらっています。
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1999年 西ティモール、ベルで撮影

エスニックジュエリー

色々な生き物が渦巻いています。エスニックジュエリーにはスタイルやモードとしての機能はなく、アニミズム的世界における護符や呪術の道具として、または地位を示しときには武器としての役割も果たします。自然の力を頭、首、指、腕、脚に巻きつける。体は丸くジュエリーも円形です。ここに円の象徴も忍び込みますます威力を発揮します。
これらジュエリーが現代社会において護符や呪力の源として通用するかどうかは着装者の考え方次第ですが、着装することで微妙な社会的地位を得られ体も鍛えられ強そうにも見えます。そして非常時に武器になることに間違いはありません。もちろんすでにスタイルとモードに変換されています。
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筋紡錘(すじぼうすい)

紡いだ糸のとなりに音を奏でる太鼓を置いて、音を奏でる太鼓のとなりには糸を紡ぐ道具”紡錘”を置きます。“織”の字は糸の隣に音、その隣に戈。ここでの“戈”は聖なる武器のシンボルと解釈して、織りのはじまりの聖なる武器といえば“紡錘”です。糸のあるところには音があり、糸と音のあるところには織りがあります。織も音も、どちらもとっても数学的で纏う以外はとても手に負えませんけど。相変わらずな自由勝手な解釈です。

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