朝7時、たっぷりとした長いスカートとショールのなかに豊穣なその肢体を包み、
小さな山高帽をバランスを取るように頭にのせた女たちが花屋にうずくまる。
荷を運んできた男たちの姿はなく、商売が退けるころまたやって来るのだろう。
一束のピンクのバラ7ボリヴィアーノ。
花を抱えてホテルに戻るとフロントの女性は「コチャバンバから来るのよ」と大きなガラスの花器を用意してくれ、
従業員の男性は下の方の葉を落として水を入れてくれた。
毎朝買って部屋に飾る。前日に買った花はフロントやレストランへと場所を移ってゆく。
陽も落ちて肌寒くなっても、まだ萎れた花を商っている女がいる。ほかの花屋はとっくに片付けて帰ってしまったのに。
もう少し売れるまで粘るつもりだろうが、花を買う客はいそうもない。
首の傾いた白いカーネーションの値段を聞く。
値引き交渉をしたけれども、花売りの首は傾かず左右に揺れるばかりでにこりともしない。なのに花を買ってしまう。
入り口のホテルの扉を開けてくれた従業員の男性は呆れ顔で、それでも花器に水を入れ花を生けてくれる。
部屋に飾りしばらくすると、水を吸い上げた花はしっかり首を持ち上げ、微笑んでくれた。
ラパスのロドリゲス市場に近い通りは、毎日花売りたちで賑わっている。


