中国雲南省のナシ族の生きた象形文字。
手に持った2本の線がブルブル震えているのと、しゃがんで紡錘から糸が繰り出しているカタチは「紡ぐ」、
足を投げ出して座り、たてに並んだ線(よこ糸)にバッテンがされているのは「織る」、
まるで、ことばの通じない国で「紡ぎ」「織り」を相手に伝えたいときに描く絵のよう。
トンパ文字は、わたしたちがに日常親しんでいる文字の意味合いとは随分かけ離れているようで、
人と人のコミュニケーションのためではなく、
神の言葉、ナシ族の起源や神話をシャーマン(シャーマンのことをトンパという)によって書き残され伝承され(文字のハジメはすべてここにあるのだけど)
いわゆる普通には読めない読んではいけないコトバなのです。
そんな神の言葉や神話を伝えるための文章に「紡ぎ」「織り」の文字があるなんて・・・、
古事記やギリシャ神話をはじめ、織物や糸のお話は世界中で語り継がれている「やっぱりここにも・・・」とこの大発見にほくそ笑む。
文字を掘ってゆくとカタチにぶつかり、文様を掘ってゆくとコトバにぶつかる。
ミャオ族の蝶の文様を「母」と、アトニ人のカイフの文様を「絆」と、どうして読むことができないといえるだろう。

写真
トンパ文字 P90
王超鷹 マール社