今回久しぶりにミャンマーへ向かったのは、2008年にバングラデッシュに出かけたときと同じように、
それはチン族の人々の暮らしのなかに自分の目で布を確かめることが出来たらと、そんな思いからでした。
チン族と呼ばれる人々はミャンマー西部、バングラデシュ東部、そしてインド北部の国境地帯に現在は居住していますが、
18世紀以前にはどこに住んでいたかも不明で、まだまだ多くの秘密のベールに包まれているといわれます。
身に纏う姿、織っている様子、そして家々で大切に保管されている布を一枚でも見せていただけることが出来たら・・・、
「ああ、チン族の布がチン族の人々とともにある」
布が、生まれた場所を離れてしまう前の布の活きた本当の姿をひと目でも見ることが出来たら、なんて幸せでしょう。
ただそれだけです。
チン族の住む国境エリアは各国政府の許可が必要で、外国人の自由な旅行は禁止されています。
バングラデッシュでは政府の許可の必要のない、ひとりで自由に旅できる範囲でそれを叶えたいと願いましたが、
ミャンマーとの国境に近いチッタゴンヒルズのバンドルボンの町は警察や軍人の姿が多く、
「ここから先、外国人は町から出ることは禁止されている」の一言で断念しました。
バスターミナルで「チン・ムロ族の住んでいる村はここから近いのですか」と尋ねてみると、
「数十キロか先に、伝統的な藍染のお尻を隠す程度の腰布を巻いた人々が暮らしている」と答えがありました。
その言葉がどんなに嬉しかったでしょうか、その真意は定かでなく、そこに行けないとしても。
それから3年半も過ぎてしまいました。
ミャンマーも外国人は自由に旅することは出来ません。
これは外国人だけではなくミャンマー人にも適用されています。
たとえばヤンゴン管区に住むインド人がヤカイン州に行くにはやはり許可が必要で、
もし許可なしで出かけると、ヤンゴン管区に再び入ることが許されないそうです。
ミャンマー人であってもその人種によって、自由に移動出来る州と許可が必要な州があるようです。
自由に国内を旅をすることが出来ないとしても、とにかくチン族の人々が住む国へ、チン族の布の近くに行きたい・・・。
それは2008年のこの本との出会いが始まりです。
