TEXTILE DIVER 布を探しに

布につながるすべての感覚をひろげて 

針山

長い髪をお団子のように丸く、仏像の宝髻のように結い、花や色々なかたちのピンや櫛を、お供え物をするかのように飾ります。

あらっ、よく見ると長い糸が頭上から垂下がり、顔を動かすたびにゆれている・・・。

針や糸や布、刺繍のための付属品を商いながら、自ら刺繍にいそしむ、その髪には針が刺さっていました。



宝髻=針山



宝髻のかたちはまさに針山そっくりで、針は刺しゅうをする人々にとってなくてはならない道具。

刺しゅうが上手くなりますようにと、針を大切にして思いを込めてひと針ひと針刺してゆく。



針を宝髻に納めるなんてとても理に適った組み合わせ、針の神様もさぞかしお喜びのことでしょう。









松岡美紗さんの「衣(ころも)風土記」Ⅰのなかに、開拓地の人と“アットゥッシの衣一枚と針2本を交換した”とあり

オヒョウの皮剥ぎからはじまり、糸を績み、機を織り、仕立てて刺繍して、それはそれは長い時間と手間をかけて作られた衣が、

たった2本の針の価値しかないのだろうかと・・・わたしも著者同様言葉を失ってしまいました。



今の感覚で考えればなんとも理不尽な取引きに思えてしかたないけれど、必要な針がなく、それが異国から運ばれてくる貴重なものであったならば・・・。

ここにあるモノとないモノ、あそこにあるモノとないモノ、貨幣をともなわないモノとモノの交換は世界中で行われ成立していたのも確かなこと。





「それでも、針がなきゃイカラカラが出来んから、仕方がなかった」(イカラカラとは刺しゅうのアイヌ語である)

「衣(ころも)風土記」Ⅰ P24より



中国にお出かけの時は、どうぞ針をお土産にお持ちください。

とっても喜ばれますよ。







衣(ころも)風土記 Ⅰ  松岡美紗

法政大学出版局

布と髪

まっすぐな黒髪を持つ人々。



まっすぐな黒髪に、老いとともに白いものが交じりはじめます。

髪の色が黒ければ黒いほど、髪がまっすぐであればあるほど、白くなってゆく髪は目立つものです。



白くなった髪を黒く染めることも良いことですし、白くなってゆく髪に合わせて髪形を変えてみるものもちろん良いこと。

そしてもうひとつ、白くなった髪に布・・・。

伝統的な髪の装いは、女性が年を重ね老いてゆく姿を魅力的にするための工夫がされ受け継がれてきたのかもしれません。



髪に布の装いを、考えてみようと思います。













旅と言葉

一回の布旅でどれだけ多くの人のお世話になるでしょう。

それが初めての訪れる場所であったなら、

言葉の通じない国で道を尋ね、宿を探し、食事を注文し・・・布に辿り着く以前の、純粋な旅の感覚を全身に刻む。

道を尋ねられた人々は「言葉も出来ないのにここに来るな」とは言わない、

その代わり、広げた地図を指差し道を場所を教えてくれたり、たどたどしい発音で繰り返す地名に辛抱強く耳を傾けてくれる。

時にはそこまで案内をしてくれることも良くある。



それが訪れたことのある場所ならば、

言葉の通じない国で前は知らなかった新しい道や風景を横切り、宿や食堂や道端の物売りのなかに顔見知りを見つけると、

大きな笑顔で迎えてくれる。



行く場所のあること、そして知っている人がいることのなんて幸せなことでしょう。





民族の数だけ布があり、音があり、言葉がある。どこに行っても言葉は通じないのだからどこでも行ける。



言葉は時に、重ねれば重ねるほど伝えたい思いとは違う方向に進んで行ってしまう。

言葉の聞こえてこない心地よさ、それはただの音として意味を持たずに景色の中を流れてゆく。

言葉が聞こえてきたとたん、夢から覚めるように現実に引き戻される。













California,1990 P6

Matt Mahurin



TWIN PALMS PUBLISHERS 1999

空は青い、海も青い

空を見上げると、青い空。

空のなかを飛ぶと青はもういない。



浜辺から海を見渡すと、青い海。

海のなかに潜ると青はそこにももういない。



青、近くて遠い色。







ボリビア ティクワナ

藍を着る女



全身藍のコーディネート、手に提げているビニールも青く、

背景のフェンスの色まで青い。



ビニールや金属のフェンスは藍では青く染められないけれど、

布をさまざまな青に染めることの出来るのは藍だけ。



中国 台江

「藍展」~ヨーガンレール大丸神戸店~

藍展 2012年6月23日(土)~30日(土)

ヨーガンレール大丸神戸店→http://jurgenlehl.jp







写真 ヨーガンレール





古来より、世界中の人々と共にあった藍。

単に色持ちの良い染料としてだけではなく、

薬や虫除けなどの力で人々の体を守ってきた藍の布は

祭事などの儀礼服から普段着まで

土地に深く根ざし、愛されてきました。



藍に染まった藍の手は、藍を染めた手。

皺のなかも、爪にもすべてに藍がしみこんで、

その手で染めた藍の布には、

人々の藍への思いまで沁みこんでいるかのよう。



今回ババグーリでは、そんな藍に的を絞って

ティモール テキスタイルの岡崎真奈美さんと共に

豊な藍色をご紹介してゆきます。



6月23・24日

ティモール テキスタイル 岡崎真奈美在店





ヨーガンレール大丸神戸店

神戸市中央区明石町30 常盤ビル1階

078-333-4088

11:00~20:00

Mottainai:The Fabric of Life

Mottainai:The Fabric of Life

Lessons in Frugality from Traditional Japan



Art in the Garden Fall 2011

Gallery Kei & Sri at Portland Garden









2011年11月 ポートランドの日本庭園で

京都、ギャラリー啓の川崎啓さんが木綿以前の自然布を担当し、ニューヨーク、Sriのステーィブン セバネックさんが木綿を担当して開催された

「もったいない:生活に密着した手織物:昔の日本から学ぶ倹約の教訓」の展示会図録

一点一点の写真、解説、そして繊維の拡大写真が魅力的。



残念なのかそれとも幸いなのか、ネットでの購入は出来ないので直接ギャラリー啓さんへ、

京都まで図録を買いに行く口実が出来ます。





ここから→http://gallerykei.jp/event-index.html