結った髪を針山代わりに針を刺し、刺しゅうをしている姿を中国で目にしたとき、
長い髪には装飾の美しさだけではなく画期的と思えるような使い道もあるのだと興味をかきたてられます。
そして、ティモールの女たちの髪のエピソードを思い出したのです。
ティモールの人々は、メラネシア系民族の特徴である縮れた髪をしています。
女たちはその縮れた髪を頭の後ろで丸くまとめ、水牛の角を削り出した櫛を挿すのが伝統的なヘアースタイル。
ところがここ2、3年、直毛のヘアースタイルがティモールで流行り出し、
わたしの知り合いの女性たちもまとめていた縮れた髪を伸ばして切りそろえ、肩の長さに垂らすようになりました。
髪をまっすぐにする特殊な薬品が島に入ってきたことで人々の憧れだった直毛が可能になり、この流行に火をつけたのでしょう。
まっすぐな髪ならばカールや縮れさせたくなり、縮れた髪ならばまっすぐにしたくなり、ないものが良く見え憧れるのはどこの国でも同じこと。
それが似合っているか似合っていないか?これはまた別の問題。
ティモールの女たちは結った縮れた髪のなかにお金を隠していました。
買い物をしたり、バスの料金を払うとき、結った縮れた髪のなかに指を入れてお金を取り出し、受け取ったおつりをまた結った縮れた髪のなかに戻す。
「落としたり忘れたりしない」と尋ねると、「ここが一番安全だよ」
髪のウェーブはお金をすっぽりと隠し、落ちないようにガードします。
もちろんみんながみんなそうしているわけではないのですが、これは縮れた髪を結っているからこそできること。
髪がお財布になったり、大切なモノを隠す秘密の場所にもなるなんて。
髪が自然に伸びるように、髪のなかに入れたお金も自然に増えるといいのにネ。そんな願いももしかしてあるのでしょうか(笑)

Manami Okazaki