瘢痕のようにドット模様が顔の周辺に彫られ、
目は丸く、口は横長に刳り抜かれただけの丸く裏から見るとお盆のようなその単純な表現に猛烈に魅かれた。
西ティモール マラカ県 ベル地方の伝統的な面だと教えてくれたのは、
この面を見せてくれたベルに隣接するTTS県に住むアマナトゥンの友人だった。
どのようなルートで彼の手元にあるのか?そしてこの面は何なのか?
面に夢中になっていたわたしは質問することなどすっかり忘れていた。
こんなことは多々あることで、宿に持ち帰って興奮が冷めた頃にやっと色々な質問が浮かんでくる。
最近見つけた本、1991年にOxford University Pressから出版された Indonesian Primitive Artの1ページに、
この面のかなり古いと思われる写真を見つけた。
写真の下には“Timor monkey mask.Wood Height 18.5cm.Tatiana Gallery Singapore"
多分このドットの作る線が、サルの顔に似ていることからモンキーマスクと呼ばれるのだろう。
ティモール人が?それとも蒐集した人が名づけたのか?はわからない。
手元にある面とほとんど大きさは変わらないが、写真の面は随分煙に炙られ黒光りし、
両方の端に紐を通すための穴が開けられ、左側の一部が欠けている。
伝統のかたち、それ以来現地では一度も出会うことのない面を、本のなかに見つけた。
また探してみよう。


Indonesian Primitive Art
IRWIN HERSEY
Oxford University Press 1991年
面写真
No29 “Timor monkey mask.Wood Height 18.5cm.Tatiana Gallery Singapore"