わたしが勝手に"watari便"と呼んでいる郵便物がある。
これはご近所にあるお店"watari"のオーナー自らが直接、お店のご案内を郵便受けに配達してくれる特別便のこと。
出張で家を留守にすれば、帰って来てから溜まった郵便物を整理するのはあたりまえだけど、
わたしは家にいてでさえ、何日も郵便受けを開かないことがある。
とてもよくないことなのだが、メールや携帯など他の連絡手段があるからこそできることで、
展示会の前など"自主的軟禁期間"として、外出の必要がなければ家から一歩も出ない日々が続く。
けして郵便物を御座なりにしているのではなく、投函、集荷、振り分け、配達と、多くの手と時間をかけ手紙という物質が運ばれる過程は大好きだ。
世界中の郵便事情はすでによくなり、わりかしスムーズに郵便物が届くようにはなっているけれど、
それでもティモール島などからの郵便物は時に忘れたころに届くこともあり、それはそれで新鮮な驚きをも運んできてくれる。
その反面、大事なことはティモールから郵便では送ってはいけない。
通常の郵便物は消印がありいつ頃届いたのかわかるが、watari便には消印はない。
watariさんいつ入れてくれたのかしら?この郵便受けの前に立った気配を探り嬉しくなる。
今回届いていたのがこれ「私的深川案内」watariさんのお店のある門前仲町~清水白河周辺の地図。
わたしも深川暮らしは長いが、それでも広げると知らない店もたくさんある。
地図を眺めながらこれがwatari便の配達区域、自転車に乗って配達するwatariさんの姿を想像する。
門前仲町では明日、富岡八幡宮の骨董市もあり、隅田川支流の大横川沿いの桜もまだまだ華やいでいる。
まずは朝一番で大江戸骨董市へ、そして大手町から東西線でぴゅと門前仲町に来て「私的深川案内」を片手に歩くのはいかがだろう。
明日の降水確率60%、お天気は心配ではあるが雨降りならそれも良しとしよう。

桜の季節、中国のピンクの布を敷いてみたところ少し艶っぽくなったが、内容は極めて健やかな案内である。
私的深川案内 門前仲町~清澄白河
発行日 2015年4月1日
発行人 小林紀子
出版所 watari出版
企画 小林紀子
文 青野賢一
写真 小林紀子