木綿の織物のことも、まだまだ絡み縺れてままならないのに、樹皮布に手を付けてしまったことを半分後悔し、また半分は必然だったと思っています。
いつも嬉しく感じるのは、来て下さる方の個人的な体験や思いが、展示の布やお話し会の内容と結び付き、物事が新しい方向へと動きだすことです。
今回も、いつも温かな気持ちと一緒に来て下さる方の所蔵する、その方のお父様がインドネシアで20世紀初頭に購入され持ち帰ったバリ絵画がもしかすると樹皮布に描かれているのでは、と話しが盛り上がりました。
そのバリ絵画のことは以前から伺ってましたが、絵の様式や用途にばかり気がとられて、素材にスラウェシ島の樹皮布が使われているなど樹皮布のことを知るまでは考えが及ぶわけはありません。
日本に樹皮布があったかどうか?このこともまだハッキリはしていません。日本では早い時期に紙漉きの技術が大陸から渡ってきているので、樹皮布だったとしてもそれを”紙”と認識し判断した可能性もあるからです。
散らばった小さな点がひとつ繋がったり、モヤモヤしていたことがちょっとだけ晴れたり、あれっと思う気づきがあったり、日常ではなかなか探せないものが用途を超えた非日常的な”布”のなかに、ひょっとすると見つかりやすいのかもしれません。
わかりずらいタイトルと樹皮布という知らなければ何と呼ぶかも解らない、わけのわからないモノに関心を示してくれた皆さまに感謝します。ありがとうございました。