TEXTILE DIVER 布を探しに

布につながるすべての感覚をひろげて 

「布と装い、そしてはじまり」 ギャラリー創芸工房 おわりました

木綿の織物のことも、まだまだ絡み縺れてままならないのに、樹皮布に手を付けてしまったことを半分後悔し、また半分は必然だったと思っています。


いつも嬉しく感じるのは、来て下さる方の個人的な体験や思いが、展示の布やお話し会の内容と結び付き、物事が新しい方向へと動きだすことです。


今回も、いつも温かな気持ちと一緒に来て下さる方の所蔵する、その方のお父様がインドネシアで20世紀初頭に購入され持ち帰ったバリ絵画がもしかすると樹皮布に描かれているのでは、と話しが盛り上がりました。


そのバリ絵画のことは以前から伺ってましたが、絵の様式や用途にばかり気がとられて、素材にスラウェシ島の樹皮布が使われているなど樹皮布のことを知るまでは考えが及ぶわけはありません。


日本に樹皮布があったかどうか?このこともまだハッキリはしていません。日本では早い時期に紙漉きの技術が大陸から渡ってきているので、樹皮布だったとしてもそれを”紙”と認識し判断した可能性もあるからです。


散らばった小さな点がひとつ繋がったり、モヤモヤしていたことがちょっとだけ晴れたり、あれっと思う気づきがあったり、日常ではなかなか探せないものが用途を超えた非日常的な”布”のなかに、ひょっとすると見つかりやすいのかもしれません。


わかりずらいタイトルと樹皮布という知らなければ何と呼ぶかも解らない、わけのわからないモノに関心を示してくれた皆さまに感謝します。ありがとうございました。



インド木版更紗 ―村々で出会った文様の原形―岩立フォークテキスタイルミュージアム

第14回展 Indian Woodblock Prints


2018年4月5日ー7月14日 木・金・土曜日 10時ー17時開館


岩立フォークテキスタイルミュージアム「インド木版更紗ー村々で出会った原形」がはじまりました。3階までの階段を上ると、表情のある木綿に茜で堅牢に染められた木版更紗が出迎えてくれます。「憧れの木版更紗・・・」心の内に湧く言葉は、島の外から運ばれて来た布に恋焦がれたインドネシアの人々の気持ちへと重なります。インドネシアを布を探して歩いていると「カイン インディア、カイン インディア」という言葉をよく耳にします。他の東南アジア諸国ではめったにないことです。カインは布でインディアはもちろんインドのこと。これらの布は古くはアラブやインド商人よって、そして16世紀に入るとポルトガルやオランダの西洋諸国によって香辛料貿易の最大の交易品としてインドネシアに運びこまれました。いつも、どうしてインドネシアの島々の人々はインド木版更紗にこれほど熱狂したのかと考えていましたが、岩立フォークテキスタイルミュージアムに展示されたラジャスタンの村々で作られた木版更紗の文様の多様さと生命力が吹き上げるような茜の赤に純粋に人間の心が昂るのを感じるのです。今まで見たこともない華やかな文様と艶やかな赤に魅了されないはずはありません。西洋諸国の熱望する胡椒・丁子・ナツメグ、そしてそれらの資源を所有する島の人々は”布”を交換に望みました。相手の要望する布を作ることの可能であったインド木版更紗の生産力と技術の背景にある長い歴史を改めて確認します。木綿や染料の材料があり、媒染の知識と技術を持ち、そして文様を表現する能力、これらのすべての要素が一枚の木版更紗になって海を渡ったのです。染織の情報がギュッと一杯詰まった布はインドネシアの染織文化の歴史に大きな影響を与えました。


1995年に2か月ほどラジャスタンとグジャラートを歩いたことがあります。その時、あまりの染織の奥深さに手の付けようもないままにその土地を離れたことが思い出されます。その後にマレー半島を南下し、インドネシアのスマトラから東へ東へと移動し最東端のティモール島に辿り着きました。ティモール島、そこには何もなかったのです。原始機での織物以外は、一枚布を纏う以外は何もなかったのです。それ以来インドへは一度も行く機会もなく、わたしはティモールからいつもインド染織に憧憬の念を抱いていました。インドネシアの人々がそうであったように。岩立広子編集「インド 沙漠の民と美」はずっとずっと大切な一冊です。



6月23日(土)10:30-11:30、インドからインドネシアに渡った更紗についてお話しをさせていただきます。地図にも載っていないようなインド・ラジャスタンの小さな村々をご自身の足で丁寧に歩いて集められた岩立さんとインド木版更紗の歴史を前に、布と香辛料の交易を通じて、インドネシアの人々にもたらしたインド木版更紗の文化的、そして精神的影響についてご一緒に考えることができると幸いです。インドネシア、それはインドのネシア(島々)を意味します。どうぞよろしくお願いします。


 

「布と装い、そしてはじまり」 ギャラリー創芸工房 4月14日(土)から

ー民族の布 Vol,6-


2018・4月14日(土)~4月22日(日)


10:30AM~6:30PM<会期中無休>最終日 5:00PM


木の皮を叩き伸ばして制作する樹皮布はおよそ7900年前の中国南部にその歴史を辿ることができます。インドネシアのスラウェシ島には約3500年前には伝わったと考えられ、今でも僅かな女性たちによって技術が継承されています。


4月15日(日)の「お話し会」では現地の映像を交え”樹皮布・装いのはじまり”について一緒に考える機会になれば嬉しいです。



岡崎真奈美 ティモール テキスタイル 4月14日(土)15日(日)在廊