TEXTILE DIVER 布を探しに

布につながるすべての感覚をひろげて 

「布伝説」ギャラリー うつわノート 川越

女性たちの布つくりは日々の生活の中で行われ、一枚の布が形になるまでには途方もない時間がかかります。その間には嬉しいことも悲しいこともいっぱいあり、布にはさまざまな感情や家族への気持ち、願いや祈りが込められているのを感じることができます。文字を持たない民族の記憶や伝説は模様になり語り継がれてきたのです。

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「布伝説」
ギャラリー うつわノート 川越
2021年12月18日(土)~26日(日)
11時~18時 (最終日は17時まで)

[中国雲南省 ミャオ族おぶい布部分 刺繍]
ミャオ族の伝説には、昔々12の太陽が空に輝き、地上に住むすべての生き物は太陽の激しい熱に苦しめられていました。そこに英雄が現れ、11の太陽を撃ち抜き太陽が一つになったというお話があります。
このおぶい布のくるくるした刺繍はそんな混沌とした空の様子を描いていると言われています。

「布伝説」ギャラリー うつわノート 川越

年内最後の展示会のご案内です。
「布伝説」
ギャラリー うつわノート 川越
2021年12月18日(土)~26日(日)
11時~18時 最終日17時まで 
全日在廊
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布つくりは世界中を見渡しても古代から女性の仕事として母から娘へと継承されてきました。それは食事の準備と同じ家族のための衣服の用意です。素材を整えて糸から衣になるまでの工程と手間は、食べるものを調達することよりも時間を必要としたかもしれません。
民族の、家族の、女性たちの「布伝説」。布に触れながら布につながるすべての感覚をひろげて、皆さんとご一緒に”うつわノートで”想像の階段を駆けのぼるのを楽しみにしています。

ワクワク、ドキドキ、プルプル、ブルブル、シュワ―、、、プレッシャーの階段をいっきに駆けのぼっています。皆さま、どうぞ宜しくお願い致します。

(インドネシア スラゥエシ島トラジャ人 壁板スラ)

遊び

思い返せば、いつでもどこでもずっとみんなに思いっきり遊んでもらっていたのだと気づきます。遊びが過ぎて本筋から外れることも度々ですが、、、そんな時は外れて辿りついたところから、また違う遊びをはじめます。またいっぱ遊んでね。

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2009年7月 ティモール インサナ地方

男たちの持ち物調査

地面に並べたのは西ティモール アマヌバンの男たちの持ち物です。鰐模様の経絣の袋の上には檳榔の実とキンマの穂がちょこんと置かれています。その横に小刀、上の小さな竹筒には煙草の葉、、椰子で編んだケースの中身はこちょこちゅ大切な物(サンドペーパー、クギ、キバなど)、そして模様が刻まれた竹筒のひとつには石灰石、もうひとつにはキンマの葉、左端の金属の道具は檳榔とキンマを砕くためのもので、歯が抜けた年寄りの必需品です。
2006年の撮影記録です。いまでも檳榔、煙草は嗜好されていますが、容器のほとんどは密封性と耐久性の高いプラスチックに人気を奪われています。このころの写真はポジで撮影しています。フィルム交換の度にみんなにフィルムケースをせがまれるのです。

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2006年8月17日 ティモール

オエンラシからサムの家へ

暮らしかたで時間と距離の感じかたは異なります。ティモールで村人にくっついて歩くとき、家までの道のりを尋ねると「すぐだよ」と言われ、2時間くらいかかることがあります。彼らにとってはこれくらいの移動は日々のことなのです。日本で道を尋ねて「歩くと遠いよ」と親切に教えられ、聞くと20分くらいののことはよくあります。どちらもけっして嘘ではありません。時間の流れが違うのです。

道が整備され交通が便利になり移動時間が短くなると織物にかける時間も短くなります。ちょっと前までは歩いてすぐだったはずの場所も近頃では”バイクか車ではないと行けない”遠い場所になっています。
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「カンター母からの贈り物」岩立フォークテキスタイルミュージアム

会期が12月11日までの木・金・土に延長されました。延期期間中は日時指定予約優先です。詳しくは岩立フォークテキスタイルミュージアムのホームページをご確認下さい。

企画展はこれで終了されるようですが、染織品の維持管理に加え事務所による小企画や催事はこれからも行われるようです。

「未来に生きる方々に、何とかこのコレクションを手渡したいと心より願っております。展示は終了しますが、染織品の維持管理とともに、小規模な展示や講演会の催事などは続ける予定です。今後とも皆が楽しく集える場でありたいと願っています」(企画展示の終了のお手紙より)

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村への案内人

西ティモールのソエに長期滞在していた時には、毎朝起きると目を見張るような模様の腰布を飄々とした顔で巻いた男たちが、お世話になっている家の前で入れ替わり立ち代わりたむろしていました。
もちろん私がいるのを承知で、何か買ってもらうつもりで来ているのです。毎回面白い布や物
を持ってくる男もいれば、いつも的外れで、それでいて探して持ってくる手間を訴え交通費を要求する愛嬌あるつわものもいます。お互いの好みもありますが感覚の良し悪しはどこでもあります。
そして彼らこそが私の案内役となり、女たちが織りをする自分の村へと連れて行ってくれたのです。
もちろんベモ、バス、オジェックの交通費、タバコ、ビンロウ、食事代、家族のお土産はわたし持ちですが、彼らと行く道のりには本物のティモールの生活がありました。村で世話になり、同じものを食べ、話しを聞き、布や物の互いにとって実のある取引は関係をより深くしてくれたのは間違いありません。
今でこそ布の展示会をさせていただいていますが、当初は帰国の度に布を担いで店やギャラリーをまわり、その長年の取引の延長線にいまの仕事のかたちがあります。暮らしかたや行商、彼らから学んだことはたくさんあります。
村への道のりも、仕事の道のりも、山あり谷ありですが、それら風景は布をひろげるたびに思い出されます。

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「民族衣装ー異文化へのまなざしと探求、受容ー」文化学園服飾博物館

2021年11月1日(月)ー2022年2月7日(月)
民族衣装、民族染織に触れ感じ考え暮らすことを日々のよりどころにしている信奉者にとってはたまらない展覧会です。
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15世紀半ばの大航海時代以降、ヨーロッパ人はアジア、アフリカへと進出し、自分たちとは違う暮らしぶりを好奇心や驚きとともに記録しました。そしてヨーロッパ列強の植民地主義により人々の往来が盛んになり、また写真や映像といった新しい技術は、より正確な民族衣装の記録へとつながりました。
1960年以降は海外への渡航が容易になり現地に赴きその民族の暮らしぶりや衣装の調査を行うなど、自らの足で情報を得ようとする研究者も増えました。
(民族衣装ー異文化へのまなざしと探求、受容ーより抜粋)

今回の展覧会では「民族衣装の追求~文化学園 ゆかりの人たち~」のコーナーが設けられ、文化学園大学名誉教授、元文化学園服飾博物館学芸室長の道明美保子氏、そして民族衣装と各地の特徴ある布を35年に渡り追い求め、民族衣装にフォーカスを当てた写真を多く撮影してきた野口文子氏と同じ枠でティモール テキスタイル岡崎真奈美をご紹介いただき、恐れ多くて身が引き締まります。
思い起こせば、いつまでも就職先が決まらずに故・小池千枝先生にご面倒をかけた出来の悪い一卒業がこうして母校の博物館の展覧会でご紹介いただけることをしみじみ嬉しく思いまた励みになります。
ファッション業界からはとうの昔に落ちこぼれま、ものつくりは手放しましたが、多感な時期に憧れ学んだ「着る」「飾る」ことの意味、「美しさ」の追求はいまの布探しに繋がっています。先人の方々の仕事への情熱と想いに敬意を表し、自分なりのまなざしを持って探求と受容を等身大で実践し、新たな民族衣装と民族染織の物語を一行でも書き加えることができるように楽しみながら努めます。

日頃からお世話になっている皆様の支えあっての継続です。いつも本当にありがとうございます。
引き続き布のあれこれをご一緒に楽しんでいただけますように、どうぞよろしくお願いします。

詳しくは文化学園博物館HPをご覧ください。