TEXTILE DIVER 布を探しに

布につながるすべての感覚をひろげて 

お気に入りの食卓

ティモールの村でお世話になるお気に入りの食卓風景。左から茹でたバナナにタロイモ、そして
トウモロコシとパパイアの葉のお粥です。バナナはインドネシア語ならピーサンでティモール語だとウキ、この順番でこれらの言葉を並べると、タロイモはウビで”ラクハウ”、トウモロコシはジャゴンで“ぺナ”そしてパパイヤはインドネシア語でもパパイヤで現地では”ウカスイノオ”。
バナナやタロイモは東南アジアを起源としますが、トウモロコシは大航海時代に中南米からスペイン人によって運びこまれたもの。あれっパパイヤは・・・と思い調べてみるとパパイヤはメキシコ南部から西インド諸島原産でやはりスペイン人に発見されて他の熱帯雨林の島々に広がったと知りびっくりします。パパイヤのない熱帯の風景なんて考えてみたこともなかったのですから。村の人々は自分たちの日常の食生活をちょっぴり恥ずかしく感じているようですが、私にとってはなによりもご馳走です。
RIMG6617.jpg
ただし、ぼやきが一つだけあります。それはこの薄茶色の砂糖たっぷりのお茶です。お茶はインドネシア語でもティモール語でも“テ”で、これは当然英語の”ティー”を語源とし、本来ティモールにはお茶を飲む習慣はなかったと察することができます。村に入るときはお茶、コーヒー、砂糖、噛み煙草に石灰など、村にはなくて、みんなが毎日必要なものを買って手土産にします。わたしは食事の時は白湯でいいと、そして歯が痛いから砂糖もいらない、と伝えるのですが・・・。テーブルに置かれた飲み物はうっすらと薄茶色で、口に含むとほんのり甘いのです。用意してくれた女性の顔を見ると彼女もこちらを見つめてにっこり。「白湯だなんて、お茶にお砂糖を入れないなんて、可哀想過ぎる」
白湯を飲みながら、そんな日を想います。


移りゆき

好きな時に空を飛んだり、好きな時に海を渡ったり、そんなことが好きなように出来なくなってから一番時間をついやしたことは修理です。古い布を扱い、古いビルに身を寄せ、古くなっていくカラダに居座りつづける。時間は成長を共にしますが、成長という変化は古くなっていくことの分かち合いです。
古くなったものや壊れたものを修理しながら、そのまた先の移りゆきを待ち望みます。

IMG_0946.jpg

ティモールのクパンでどっさり買い物をした人々の荷物が積み込まれた船に乗ってヘロン島に向かいます。行きは段ボールのあいだにうずくまりのほほーんとした船旅でしたが、ヘロン島からの帰りは空も海も全部灰色になってぼんやりなんてしてられない、心境も景色も来た時とはまるで違う様相になっていました。同じ場所、同じ道でも時間同様に移りゆくのです。


夢うつつうつらうつら

なかば冬眠状態、気が付けば2022年ははじまっていて1月も三分の二が過ぎています。
目を覚まして近所をあてなく歩いてみたりして、ふたたび眠気に襲われ布団に潜り込んだりして。
現実でも夢でも、近くの人々遠くの人々の柔らかい気配に心はぷくぷくふくらんで内部は満たされます。
いつもノロノロスタートですけど、布へ一歩二歩三歩、、、、今年もみんなで一緒にね。

RIMG3819.jpg