TEXTILE DIVER 布を探しに

布につながるすべての感覚をひろげて 

ひらひら

いつもにもまして、房が気になるのは明らかに桜のせいです。足取りも軽やかにひらひら。
おろした足もとには大地が、房のもとには袋が、桜の枝もとには幹が、だから安心してひらひらします。

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トルソーシリーズ1

薔薇模様の黒いサテン地の胸元に花鳥刺繍をあしらったミャオ族のベストに、多分おぶい布と思われるまだまだ調査中の格子網代織りにパッチワークを施した布を腰に合わせます。そしてティモールの綴紐はお守り同様の必須アイテムです。
国境も用途も越えて平面に広がる布の素材、模様、形の組み合わせは千差万別ですが、ひとつの在り方がトルソーに立ち上がります。このまま体に移しかえて東西線で千鳥ヶ淵に桜を見に行くことも。しばらくゆるゆるジャージ暮らしだったので、着ることへの好ましい緊張感に全身が満たされます。頭にはラオスの紋織。こんな人を見かけたら、声をかけてくださいね。
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春休みの課題

パスポートを持ってはどこにも行けなくなっても、パスポートなしで行けるところもあります。
繕いだらけの木綿布は現役にはたいそう働きものであった酒袋。この酒袋の上に急いで必要なわけもない探し物を配置します。榀布の袋、ちぎれた木綿の紐、ピンクの絹紐、鈴の付いた小さな皮の袋、両端に麻紐の付いた皮の筒2本。なんだかわからないけど手にして言葉を交わし、やっぱりわからないことやわかって教えてもらったことを租借しながら住処に持ち帰ります。
お茶を入れて手入れをしながら観察して、少しづつ答えに近づきます。

榀布は袋状に縫い合わされているので袋で間違いなし。何を入れていたのかは自由に想像します。ちぎれて、まるでコーティングしたかのようにテカテカになった木綿の紐は刀の塚に巻かれていたもの。それを知ったときには、塚を握らなくてはならなかったその手の状況を想い複雑な気持ちになります。ピンクの絹紐は帯締めで、どんな帯に合わせていたのでしょう。鈴の付いたあまりにも小さな皮の袋は懐に入れて旅に出かけたお守り入れと教えられました。両端に麻紐の付いた皮筒は最初は鞄の取っ手かと思い握りしめて眺めているときに、ふと鼻緒であると気が付きます。
日本でも、ティモールでも何処ででも、探し物との出合はこんな流れで進行して、いつもどんより鈍い頭を少し作動させてくれます。

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ちぎれ布

気候や保存状況、そして素材の性質にもよりますが、ここまでちぎれちぎれになるまでにどのくらいの時間を要したのでしょうか。緯絣の技法で織られた崩れた布からは、赤、黄、青の染め分けられた緯糸が覗き、表面には一切あらわれない赤い経糸はちぎれた端っこから顔を出しています。糸は弱っていても色は艶やかに残っています。
手のなかに収め眺める度に、ハラハラと絹繊維は塵になって布は徐々に失われていきますが、その塵と気配を吸い込んで、こちらは元気をいただいているようです。

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ズレ

歩きつ続けてだんだんわかってきたことは、布を探し続けることは、次に来る布を知ることです。次に来る布を知るには、歩き続けるしかありません。同じことを繰り返しているようでも少しづつズレて、その僅かなズレを見つけ感じることをまた繰り返します。

3月3日

親愛なる姫さま方、お気に入りの布をひっそりバックに入れて、マスクの下にはうっすらルージュをひき、からだのなかにしっかり個をおいて、誰に見せる必要もないのです。今日ももってこいの日でありますように。もちろん殿もね。
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晴れの日も、楽しい日も、どんな日も、もってこいの紐

晴れの紐、雨の紐、楽しい紐、悲しい紐、、、さすがティモール テキスタイルのパーソナルコンピュータ、見事な変換「あっぱれ」です。こんな素敵な言葉まったく思いつきませんでした。モヤモヤした気持ちも明るい方へとヒラヒラなびきます。
今日から3月、どんな日も、どんな紐、笑いと勇気、そして布と紐でもってこいの日でありますように。
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