TEXTILE DIVER 布を探しに

布につながるすべての感覚をひろげて 

布のうらと袋のうち」べにや民芸店

布のうらのうら話
中央に山羊皮を配したタジキスタンの飾り布の裏側。タジキスタンを訪れたことはありません。布商人として渡航と交易を閉ざされたこの2年半、ならば国内でと行ったことのあるとこないとこ、これから行くのか行かないのか未知なとこ、布を探してやっぱりウロウロ。

「布のうらと袋のうち」
2022年7月16日(土)ー24日(日)
べにや民芸店 駒場東大前
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出会った時のタジキスタンの布の状態は思わしくなく、その修理に裏技協力してくれたのは以前インドネシアから持ち帰ったやっぱりボロボロのダヤックの衣裏だった赤い布です。
布のうらを飾って、うら話を用意してお待ちしています。どうぞ宜しくお願いします。

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「布のうらと袋のうち」べにや民芸展 

5ヶ月ぶりの展示会のお知らせです。

べにや民芸店での今回3回目になる展示会は12年ぶりで、1回目からはなんと17年ぶり。長い時が過ぎているにも関わらず、こうして展示会を開催していただけることに感謝しかありません。

「布うらと袋ののうち」
2022年7月16日(土)〜24日(日)
べにや民芸店 駒場東大前
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布には表と裏があり、袋には外と内があります。これらの関係は対立するものではなくお互いに含み合い、片方だけでは平らなありように捩れと膨らみを持たせてくれます。裏や内には、実は作者にとってはあまりジロジロと見られたり聞かれたくない裏技や内密なことも隠されているかも。そして裏や内こそが着用者や物の表面にいつも触れているのです。めくったりひっくりかえしたり、表裏内外のあらゆる繋がりを読み解きながら裏話、内緒話も交えてみんなで楽しめると嬉しいです。
(ティモール テキスタイル 岡崎真奈美)




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2010年「しるしのもよう」
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2005年「ティモール島の暮らしと織り」




ヘビの腕輪

その奇妙な形からヘビは嫌われる恐れられもしますが、同じ理由から崇め畏れられもします。人々は渦巻く姿に螺旋のエネルギーを、脱皮の様子に生まれ変わりなどさまざまな物語を見つけ信仰し身に付けてきました。これら西ティモールのヘビの腕輪“ニティサオ”は富を引きつけると信じられ、女性たちの腕にくるりと巻かれています。布を引きつけると信じて、わたしの腕にも何匹かの“ニティサオ”にしっかり巻きついてもらっています。
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1999年 西ティモール、ベルで撮影

エスニックジュエリー

色々な生き物が渦巻いています。エスニックジュエリーにはスタイルやモードとしての機能はなく、アニミズム的世界における護符や呪術の道具として、または地位を示しときには武器としての役割も果たします。自然の力を頭、首、指、腕、脚に巻きつける。体は丸くジュエリーも円形です。ここに円の象徴も忍び込みますます威力を発揮します。
これらジュエリーが現代社会において護符や呪力の源として通用するかどうかは着装者の考え方次第ですが、着装することで微妙な社会的地位を得られ体も鍛えられ強そうにも見えます。そして非常時に武器になることに間違いはありません。もちろんすでにスタイルとモードに変換されています。
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筋紡錘(すじぼうすい)

紡いだ糸のとなりに音を奏でる太鼓を置いて、音を奏でる太鼓のとなりには糸を紡ぐ道具”紡錘”を置きます。“織”の字は糸の隣に音、その隣に戈。ここでの“戈”は聖なる武器のシンボルと解釈して、織りのはじまりの聖なる武器といえば“紡錘”です。糸のあるところには音があり、糸と音のあるところには織りがあります。織も音も、どちらもとっても数学的で纏う以外はとても手に負えませんけど。相変わらずな自由勝手な解釈です。

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変化しない布

インドネシア、サブ-ライジュア島の儀礼布。これらの布はアムイアナプと呼ばれる「女性祖先の家」に共同体の財産として貯蓄されます。
衣装としての腰布や腰衣は時代とともに市販の紡績糸、化学染料、そして新しい要素をプラスした模様が取り入れられ進化し続けていますが、祖先の家に収められる布は手紡木綿、天然染料、伝統模様とあくまでも古いしきたりに従った方法で布が織られます。
こちらの世界はますます目まぐるしく日々変化をしていますが、あちらの祖先の世界では時代に合わせた変化は必要ないようです。


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祖先の布

インドネシア、サヴ-ライジュア島の織物は大きく3つのカテゴリーに分けることができます。男性用布、女性用布、そして祖先用布です。
この祖先の布は他の二つに比べ緯糸が見えるほどゆるゆるに織られている布があります。彼女たちの用語で緯糸は“lua”と言われ、これは血管を意味する言葉です。
血管をを通じて生命エネルギーが全身に運ばれるように、織物ではその役割を緯糸によって行われるという考え方に基づいています。祖先の布を織る季節や期間は決められ短時間で織り上げなくてはなりません。そのために織りがゆるくなってしまうのか、それともからだを失った祖先には「血管」機能は重要ではないのでゆるゆるで良いのか。
血管と緯糸、身体と織物、こんな布のお話に出会い考え始めると、顔も体も頭もゆるゆる緩みます。
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筋紡錘

“筋”と“紡錘”はともに染織用語ですが、この二つのを組み合わせた言葉”筋紡錘“は染織用語にはなく、人体に組み込まれた感覚受容器官のことです。
そう、人体は繊維組織で織り上げられています。わたしたち自身が美しい一枚の織物です。
布に繋がる全ての感覚をひろげて、どこまでも前進です。
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