TEXTILE DIVER 布を探しに

布につながるすべての感覚をひろげて 

ティモールの機舟

ティモール島の、機を織るようすはまるで舟を漕いでいるかのようです。



大地に敷いた椰子の茣蓙の上に足を投げ出し座り込み、機に掛かるたて糸のその一方を地面に打ち込んだ棒や家の柱に括りつけ、

もう一方は織手の腰に回した腰帯で引っ張ります。



膝を軽く曲げ、上半身を前傾させたて糸の張力を緩めよこ糸をとおす。

今度は膝を伸ばし、上半身を起こしてたて糸を張り刀杼を入れて打つ。

一連の動作はしなやかに繰り返され、一人乗りの小さな舟で櫂を漕ぎ海原をぐんぐん進んでゆくよう。



腰機や原始機のように、人と機が一体化してどこまでが人の役目でどこからが機の機能なのか、その成りかたがあいまいであればあるほど、

機は容易に舟に変身し、機舟はいつでも出港することができます。



櫂をひと漕ぎすると舟は水のなかを、刀杼をひと打ちすると糸は布のなかを、

どちらも戻ることの出来ない、どこに辿り着くのかわからない旅に向かって、水の、糸の流れに任せて前へ前へと進んでゆきます。





山に暮らすアトニ人は海を畏れます。

でも、機舟なら安心。

四角い大地はいつしか揺れる海になり、小さな機舟に乗り込んだ織手は日常のざわめきに惑わされることなく、

悠々とひとり世界に向かって漕ぎ出してゆきます。