TEXTILE DIVER 布を探しに

布につながるすべての感覚をひろげて 

布を纏う

◎一枚の布は、

木綿を紡いで糸にすることからはじまります。

永遠に紡ぎ終わることなどないかのようにつづく糸紡ぎ、

紡錘を回転させて糸を引く手が顔の前でひらひらと舞い、

それは巫女が、神の所在を尋ね歩く巫女舞いのよう・・・。



◎紡ぎ終わった糸は、

祖先をあらわす人型や太陽を呼ぶニワトリやワニの神様、

触手を伸ばし燃え広がる炎のような幾何学模様が糸を糸で括って模様を染める絣の技法で描かれ,

ティモールのアトニ人が見ている世界が糸のなかに結びつけられます。



◎模様の描かれた糸は腰機に掛けられます。

腰機は織手の身体や感情の動きを、その布に費やしたすべての時間をそのまま布に映しこんでゆきます。



裸足の足で大地に座り込み布の仕事をしている人々が、いまここと同じ時間にティモールにいます。

日本とはまるっきり違う風景のなかで生活し、日本とはまるっきり違う時計を持って布を織り上げる。



歴史的時間をかけられて伝えられる布の文様や織りの技法、布を織る織手の時間、そしてその布を与えられた人が布と過ごす纏いの時間、

一枚の布にはさまざまな時間が錯綜しています。



タイムマシーンは持っていないから、過去や未来には行けないし、

変身することもできないから、植物や動物の時間を知ることもできないけど、





ティモールの布や、ここではない時間と場所で生まれた布を纏うことはその錯綜した時間を纏うことになるのかも・・・。

「今」でしかないわたしは、「今」ではない時間で織られた布を纏うことで、自分の時間を手に入れるきっかけを得られているように思えます。



乾いた大地のようにざらついたティモールの木綿布を纏うとき、なんだか身体の中心にしっかりと杭を打ち込んだような安定感があらわれます。

布を纏い、自分の所在を尋ね歩く・・・。









Self-Portrait 1922 (cat.23)

Paul Klee

Hand Puppets P80



HATJE

CANTZ