TEXTILE DIVER 布を探しに

布につながるすべての感覚をひろげて 

飾られる祖先の面 ~インドネシア 西ティモール~

西ティモール モロのファトムナシの長アニン老人の家を訪ねる。

ここは西ティモールで一番高く(2427m)、アトに人にとっても象徴的な意味をなすグヌン ムティス(ムティス山)への入口でもある。

グヌン ムティスには祖先の財宝が隠されていると伝えられ、神聖な力に守られた場所には誰も盗みに入ることは出来ないといわれている。



円錐形に地面まで垂れた萱葺の家はルマアダット(伝統の家)と呼ばれ、中央の柱にはお面が掛けられ名前が彫ってあった。

西ティモールの原始的な面はさまざまな用途に使用される。

お祭りのときに被るものや家の飾り物として、また子供たちが自由にどこでも行けないように木にお面を掛けて脅かすため・・・、

などの話も聞いたことがある。すでに今の子供たちには通用しないかも知れないが、

森のなかで不気味な面が突然現われたらやはりギョッとすることであろう。



家の主人アニン老人に「この仮面は何ですか?」と訪ねる。

「これはわたしのお祖父さんの顔を彫ったものです。ロテ島の腕のいい人にわたしが頼んで彫ってもらったのです、お祖父さんのことを忘れないように。

お祖父さんはこの村ではとても尊敬された人で、道の名前にも“サニ アニン”と名前が付けられています」



このお面は祖先の写真の役割をしている。

西洋の歴史では写真以前は絵画や彫刻で偉大な人々や神々を記憶してきた。

西ティモールでは木面や木彫がその役割を果たしている場合も少なくはない。

わたしたちの目にはすでに見えなくなっしまったものと話しが出来た人々、

それをかたちにした面には祖先の、自然のスピリッツが遠慮なく住処として入り込んだであろう。



“プリミティブアート”



空洞な眼孔、軽く開かれた口元、面はトウモロコシと一緒に人々の生活の中央に飾れ火の煙にいつも炙られている。

わたしは煙が染みて目も口も開けていられなかった。