TEXTILE DIVER 布を探しに

布につながるすべての感覚をひろげて 

青空の下での会食 「ドレスコードはプリーツスカート」

中国のバスターミナルから発車されるバスは正確な時刻表で運行されているので、移動や日帰りなどの計画が立てやすい。

この日は馬関08:30発-猛洞行きのバスに乗車する。

猛洞は雲南省南部のベトナムとの国境に接する町でミャオ族が多く暮らしている。市の立つ農歴の猪と巳の日にはベトナム側からも人々が集まるという。出発前、バスの運転手に市のことを尋ねると彼は少し考えてから「今日は狗だから市は明日」。もちろんこれらの会話は筆談で行われる。

馬関から猛洞までは約3時間。ところが直行便と一方的に思い込んでいたバスは経由便で、それは見ればバスのフロントガラスに表示されていた。予定通りにいかないのは旅をしているとよくあることで、立ち寄るつもりのない町での一時間の停車。ひょんなギフトをもらったと 、与えられた状況を楽しむことには磨きはかかっているつもり。

バスが停車したのは市場の近くで賑わいがある。カメラを下げて歩き回り写真を撮るわたしをバスの運転手は面白そうに眺めていた。

目的の猛洞に到着したのは12:30。馬関からのバスは朝と夜の2便で、途中すれ違うバスもなかったので着たバスに乗らないと帰れなくなる。何時にここを出発するのかと尋ねると1時と言う。4時間掛けて来た猛洞に30分間の滞在。市のない町はひっそりとし、さらっと一回りするとすでに時間で慌ててバスに戻ると運転手はまだ大丈夫だからもう一周してこいと大きく手を振る。誰かを、荷物を待たなくてはならないのか、それとも乗ってきたバスで帰らなくてはならないわたしを不憫に思ったのか出発は延長された。そしてそれから30分、バスのクラクションが町に響き渡る。出発の合図にバスを目指し走るわたしをバスは迎えに来てくれ、開いたままの扉から飛び乗る。

帰りは来た時よりもガラガラで乗客は3人だけ。途中バスの中から、青空の下での テーブルを囲んでいる女性たちの姿が目に入る。「ドレスコードはプリーツスカート」と心の中で思っているとタイミングよくバスが止まり扉が開く「行ってこい」。

その後も何度かバスは止められた。市が見れなくても、猛洞に一時間しか滞在できなくても、運転手からの予期しないギフトは何よりも嬉しい。多分ひとりの只々好奇心からのちっちゃなわたしの冒険を面白く思い応援してくれたのだろう。それは国も言葉も名前も関係ない、個の気持ちとして。

最後にバスが止められた時、使用済みのバスチケットの裏に「越南・・・・」と書いた紙を渡された。

指差された左手彼方の峰々、そこはベトナム。そのあとバスは経由地には止まらずにまっすぐ馬関を目指した。