TEXTILE DIVER 布を探しに

布につながるすべての感覚をひろげて 

雨季のティモール

灰色の空から、堪え切れなくなった大量の雨が一気に大地に降り注ぐ。そのお陰で気温は下がり涼しい風が吹き抜ける。終盤を迎えた旅を振り返るには丁度いい時間。太陽の下では微睡みに誘われ思考は停止してしまう。

一昨日、ティモール山間部からクパンの街に戻り梱包を始める。いつものように箱に収めた後、プラスチックのシートで包みビニールテープで縫い合わせる。安全な旅と無事の到着を願いおまじないを唱える。

馴染みの郵便局の女性は「一ヶ月と15日」と自信を持って明確な到着日を伝えてくれる。今から数えたその日にちをノートに書き込み、あとは待つしかない。



ティモール島には1月14日にスンバ島から渡る。聞くと雨季に入ったはずなのに既に一ヶ月、雨が降っていないという。旅するには嬉しいニュースも村の人々を思うと切なくなる。本来であれば11月中頃から雨季がはじまり、トウモロコシの種が蒔かれ、4・5月に収穫されたものが村人の一年の食料となる。

気象状況の変化は伝統の暮らしのリズムを容易に破壊する。乾季の厳しい生活を想像すると頭上に広がる青い空が疎ましく雨が降ることを祈る。雨が降っても、雪が降っても、槍が降っても、こちらの布を情報を現場を求める気持ちに迷いはなく、その風土こそが独自の織物を生み出す。日本の展示会でも「布好きは、雨が降っても、雪が降っても、槍が降っても」と言って来てくださる布を愛する方々の思いも体に沁み込んでいる。



祈りが届いたのか、わたしがティモールに上陸してからは毎日雨の歓迎を受けている。雨宿りの軒先で、訪ねた村の家で、雨が止むのを、布との出会いを静かに待つ。