TEXTILE DIVER 布を探しに

布につながるすべての感覚をひろげて 

白の刺子 カンターベンガルでの出会い 岩立フォークテキスタイルミュージアム

岩立フォークテキスタイルミュージアムで4月6日から始まった「白の刺子 カンターベンガルでの出会い」。今日はカンタ刺繡家、望月真理さんの講演を聴きに伺った。
世界のカンタ蒐集家と世界のカンタ刺繍家。
まさに出会ってしまったカンタに導かれるように愛情をこめて蒐集と研究を続ける岩立さん、布と針と糸を手にご自分でカンタ刺繍の技術を習得されいまだ実験を繰り返される望月さん。お二人ともただただ自分の心に忠実に長い道を歩かれてこられた。
望月さんのお話しは「触ってください、触って触って、これは書けないの、口では言えないの」とご自身が持参されたカンタコレクションを席に回して下さることから始まった。それは彼女のカンタの学び方が触ることだから。

カンタとは、岩立さんの「インド大地の布」には、白木綿の刺子、お金を持つことを許されなかった女たちは身近にある使い古しの白いサリーやドーティー(腰巻)を数枚重ね、古いサリーから抜き取った色糸で刺し、最後は余白の部分を白糸で丹念に、さざ波のように縫い締め、丈夫にしたもの、とある。このカンタの定義は基本として覚えておかなければややこしいことになる。市場で商品名として〝カンタ″と呼ばれる布との違いを多少でも理解しておいたほうがやっぱり良い。商品、作品として布が、技術が継承されるのはとても大切なことだけど、ことの始まりを知っていると、もっともっと興味はわいてくる。布がこの先どんな途を辿るのか、目撃者として立ち会うことになるのだから。

ノートに走り書きした望月さんの言葉の一部をご紹介。申込受付のその日で定員になったそうな、来れなかった方のために。
「手のひらで見てください、自分の手のひらで見るしかないのよ」「手のひらときちんと相談、間違いは思ぬ発見がある。間違えれば解けばいい」「規則正しくすると上手くいきません」「8時間睡眠、8時間刺繍、8時間家事」「20分、30分といかに上手に時間をためるか」「終わらせない、いつでも続く」「やりたくてやりたくて仕方ないの」・・・・岩立さんの美しい古いカンタにぐるっと囲まれて、望月さんの口からポンポン飛び出す言葉は、まるでカンタが、カンタを刺したベンガルの女性たちが話してくれてるような気持ちになる。

「使い古しの白い布を探すのは大変、でも白くて古くて柔らかい布でなくてはカンタは刺せない」と望月さん。異国の文化に魅せられて、独学でカンタ刺繍を極めた。ベンガルでは失われつつある技術を日本で継承される。
「ベンガルの風土から生まれたモスリン、サリーやドーティの一枚布を身に纏う民族文化があったから使い古しの白い布を使用したカンタが生まれた」と岩立さん。失われる民族染織への、そして人類への思いが蒐集を駆り立てた。
刺繡家と蒐集家、カンタへの向き合い方は違うけど、高い高い上のほうではひとつ。

展示されているカンタにはもちろん触ることはできないけど、耳を傾ければ、心を重ねたなら、布は必ず何かを語りかけてくれる。そして運が良ければ、岩立さんの声がお話しが聴けるかも。布好き民族日本人が唯一民族染織に定期的に触れられる場所。好きな展示会なら何度でも行きたくなる。こちらの気持ちや体調が変われば、布はまたきっと違う語りをしてくれる。聞こえるか聞こえないかは試してみないと、やってみないとわからない。「やってみないとわからない」この言葉も望月さん、何度も何度もおっしゃっていた。なんでもそう、自分で、自分でやってみないとわからない。


第11回展 白の刺子 カンターベンガルでの出会い
2017年4月6日ー7月15日 木・金・土曜日ー10時ー17時