TEXTILE DIVER 布を探しに

布につながるすべての感覚をひろげて 

布と

西スンバ コディのペロにある宿に泊まっていたとき、60才を過ぎたと思われる女主人は、

どこの東南アジアの熱帯の風景を思い浮かべたときにも違和感なく溶け込む装いをしていた。

それは長い白髪交じりの黒髪を頭の後ろで結わえ、ジャワ島から運ばれてくるソガ染めの木綿の更紗を腰にしていた。

結婚式の外出のときは、しなやかなドレープの縁にレース飾りのあるベールを頭に被り、

身体の線を消した足首まであるゆったりした服を着ていた。

その装いはイスラム教徒であることを表している。



ある日、家の中にいた彼女の布に目が留り、

「あれ、今日はフローレスのエンデのサロンですね」と声をかけると、ちょっと驚いて、そしてとっても嬉しそうに

「よく知っているわね、わたしはエンデの人間なの、コディにはお嫁に来たのよ。随分昔の話ですけど」

そのご主人はもう何年も前に亡くなっているという。



スンバ島とフローレス島は、スンバ海峡を挟んで南と北に向き合っている。

島と島は海を隔て離れ、言葉も文化もまるっきり違うなかで、古くから交流が行われてきた。

どの島でも、男がほかの島の布を纏っているのを目にすることはほとんどないが、女がほかの島の布を纏っている姿は時折見かける。

それは女と布が一緒に、そこからここへ渡ってきた(嫁いできた)ことを明らかに標してくれている。



ティモール島でも、お世話になっていたエリザベットの家に、新年の挨拶で訪れた親族の女性のひとりはフローレス島のサロンを巻いていた。

「フローレスの人ですか?」と聞くと、弟のお嫁さんがフローレス人で、彼女からの贈り物だそうだ。

女性はそのフローレスのサロンを巻いていることをとても誇らしそうにしていた。



自分の島の外から運ばれて来た外来品を身に着けることは、女にとってはやはり喜ばしいことのようです。

そして知らない島に布と共に渡って来た女は、どんなに離れても、どんなに時が過ぎても、

布に身を委ねることで、自分の島”としっかりと結ばれているようです。