TEXTILE DIVER 布を探しに

布につながるすべての感覚をひろげて 

白黒写真

以前のこと、現地で撮影した白黒写真で展示会のご案内葉書を作成したとき、どちらかでその葉書を手にして来て下った方が、

「この写真は何の資料からとられたのですか?」と訪ねられた。「現地で自分で撮影したものです」

あちらもこちらもそれ以上その件に関しては話さなかった。

多分カラー写真であればそんなふうな考えはなかっただろう。

古い書物や文献に過去の記録として載っている歴史的な資料写真と思われたのか、と勝手な想像をしそれならそれで嬉しいことでもある。



確かに、白黒写真には時間の枠を簡単にはずしてしまう要素がある。それは現実には人の目に映る“色”がそこにはないから。

世界は色で溢れ、色は一番最初に認識され、記憶される。

だとすると、色のない白黒写真は現実ではないものを、そこに写し込んでいることになる。



また、別のときに「どうして布なのに色をとらないのですか?」

もちろん旅のときは、コンパクトなデジタルカメラを必ず携帯している。

でもやはり欲望をそそるのは白黒写真で、帰国してフィルムを現像し印画紙に焼き付けられた画像は、初めて目にするような興奮と驚きと感動がある。

現地に立っているわたしは色の世界を見ている。白黒写真はその色の魔力を解き放ち、別のものを浮き上がらせる。

光・影・シルエット・・・、現地では見えなかった何かを徹底的に探し出す作業をここで繰り返す。

何かとは何か?それは多分どんなモノにも場所にもある“影”の部分を引き出す糸口になるものを。