TEXTILE DIVER 布を探しに

布につながるすべての感覚をひろげて 

“日常の旅”と“非日常の旅”

道を歩いていても、バスに乗っていても、食堂に入っても、どんな場所ででも、

そこで暮らす人々の生活の空気をむやみに乱したり引っ掻き回さないようにと丁寧に旅をする。静かに入り込み、静かに立ち去る。

赤いパスポートを携えて、訪れることを許されたということをいつも胸に畳みこみ、旅する日々の営みの小さな出来事を楽しむ。

これは“日常の旅”。



ところが、村に入ってお世話になったり、お祭りや結婚式、何かの儀式に招かれたりすると“日常の旅”とは違う世界に入り込んでしまう。

“ケ”から“ハレ”の場所に転送してしまったのだから、わたし自身も変身しなくてはならない。これは“非日常の旅”。



今まで歩いた経験では、踊りを好む人々と歌を好む人々がいる。

インドネシアの東に拡がるヌサ・ティンガラの島々の人々は踊り好き。

テンポの早い銅鑼と太鼓の単純で強烈なビートにあわせ、腰を沈め、地面を踏み固めるかのように足を踏み、鳥の羽のように腕を左右に舞わせる。

変身したわたしは、村の人と一緒になって踊る。こうなるとトリックスターよろしく真剣な踊り手になる。



インドシナの北部では歌を好む。お祭りの席でお酒がすすむと「歌を唄え」と声がかかる。十八番は「お座敷小唄」と「十九の春」。

歌詞はその都度いい加減にかわっていくのだけど、民謡や邦楽の音とリズムは、同じアジア人の耳にストレートに響くようで評判がいい。

こちらが唄えばあちらも唄う、時には「もっと歌え歌え」とひとりで唄わされる。

注がれるお酒を大地の神に献酒しながら。



よその地で、いつも与えてもらい、教えてもらい、旅をさせてもらっている。

こんな時は感謝をこめて祈り、祝い、歓びをお返しする。



“日常の旅”と“非日常の旅”変身回数が多ければおおいほど、ことは深まってゆく。

彼らとほかの土地の人々、彼女たちとわたし、なにが同じで、なにが違うのか?

この類似と差異は、人から生まれてくる布にも繊細に表れてくる。





踊りと歌、どこでもご披露いたします。変身の必要があるときには。





 ゼッケン23番勢いよく飛び出しました。

                                                   



 女の場所での宴会。

 こちらは男専用。

 ご先祖様に祈りを捧げてから、男の役目。